誰も定期的に肥料や水をやっていないのに、一年を通じて青々と生命に満ちた山や森。不思議に思ったことはありませんか? 私たちの庭にもちゃんと草花は生えている、野菜も植えてある。でも肥料や水をやらないと、貧弱なまま実がつかなかったり、いつのまにか枯れてしまったりします。一方、森や山の植物は、深い雪や変わりやすい天候にも耐え、何年、何十年、何百年、何千年、何万年、何億年と、人間の歴史をはるかに超えて生き続けています。はてさて、この差はいったいどこからきたのでしょう?
●ペチュニアの鉢植え 菌根菌を接種すると、そうでない場合に比べ、 その植物は、病気、虫、温度差などに対して 同じ生育条件下でもよく耐えられるようになり、 厳しい環境にあっても生存率が高まる |
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▲菌根菌なしの苗 | ▲菌根菌を加えた苗 | (photo/special thanks to Dr. Ted St. John) |
菌根菌には基本的に根の細胞の中にもぐりこむ内生菌根菌と、 根の細胞の外にとりつく外生菌根菌と、その両方を行う内生外生菌根菌がある。 すべての植物の約80%までは内生菌根菌と共生関係を結ぶ。 針葉樹などは、外生菌根菌と共生関係を結ぶ傾向があり、 すべての植物の90%までは、なんらかの菌根菌と共生関係を結んでいる。 |
▲左半分が菌を加えた土地 右側と景色の差は歴然 |
▲植えて3カ月め 楓の苗の比較 左は菌と共生 |
▲菌の共生する 各種ハーブ 大変力強い根 |
▲完璧な荒れ地にも 緑が蘇り始める |
実施はしごく簡単です。 植物の根が活発に成長する若い時期に、 その根のすぐそばに菌根菌の胞子を施用するだけで、共生関係が生まれます。 種をまくときに種をうめる穴に入れたり、苗を定植するときに苗穴に入れたりします。 後は土の中で勝手に成長して繁殖してくれます。効果が現れはじめるのは約一週間後。 柑橘類を中心とした果樹、くるみ、アーモンドなどのナッツ類、トマト、いちごなどでは、 収量が何倍から、時には何十倍という劇的な変化を見せることが報告されています。 |
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(左)ポット植えの芝。 右列のみ種をまくとき 菌を入れて3カ月め |
Q | 園芸用のポットに入っている土も、菌根菌を接種しておけば使用後に捨てなくてよくなりますか? 土は燃えないゴミです。入れ替えはずっしり重くて、腕も気分も重くなります(笑)。毎シーズン、そんなことしなくても勝手に健康な植物が育ってくれれば、健康で楽しくお金をかけない、がモットーの、地球に優しい生活に、とってもかなうのですが…。 |
A |
植物は、土から栄養吸収しています。直植えした植物は、落ち葉や土中のミミズの糞や微生物から栄養分を補給してもらえるので、必要栄養素がまったくなくなるということはないはずですが、ポットのように限定された環境では、土中の栄養素が偏り、さらに有害微生物に感染する可能性があるというのが、土を捨てる理由のようです。 しかし、コンクリートやアスファルトに囲まれて緑が少ない生活をしている私たちにとって、土が燃えないゴミになるなんてもったいない話ですね。土を入れ替えない方法は、いくつかあります。 まずは、鉢への植えつけ時に菌根菌を接種すること。繰り返しになりますが、菌根菌の接種は、根が活発に伸びる苗や若木の時期が一番効果があります。菌根菌との共生がおきると植物は少ない栄養素や水を有効利用できるようになりますから、土の栄養バランスの変化の悪影響を軽減することができます。また、菌根菌自身が炭素でできた有機物なので、多少なりとも土が豊かになっていきます。 土中の栄養素が偏る問題は、堆肥を追加したり、植え替えを行うことによって回避できます。それから、これは裏技ですが、超遅効性の肥料を使うことが挙げられます。最近では風邪薬のカプセルみたいにコントロールリリースでゆっくりと肥料を土中の水分に対して拡散リリースする、コーティングされた肥料が販売されています。これなら自然の土壌と同様に微量の必要栄養分が常に提供されることになり、微生物も小動物も死にません。コーティングの厚さによって、半年〜1年ぐらい肥料をリリースしてくれる仕組みになっています。一年草なら半年、多年草なら1年有効のものを使えばいいでしょう。 |