地球に優しい小さな天使のお話
ただいま実験中
by Yash
*
僕は、今、土がそのまま剥き出しになっている地面すべてに、
雑草でもなんでも良いからいろいろな植物を植えていったら、
世の中の問題の多くが解消するとまじめに思っています。
壁でも天井でも屋根でもいいんです、
僕たちの身の回りが緑であふれかえったらどんなにすてきでしょう。
でもそのためには、植物と土をできるだけ自然な環境に近い状態に
戻してやる必要があります。菌根菌は、根粒菌や光合成菌などと同様、
その第一歩に過ぎないのではないでしょうか。
*
*
時は冬も真っ盛りの西暦2000年2月中旬。
比較的温暖な神戸だが、最近は気温がひんぱんに氷点下に達し、
寒さに強いはずのパンジーまでもがうなだれている。
このパンジーには菌根菌をほどこしていない
このゴールを目指して、今、僕が庭でやっていることは……
1.とにかく、新しい共生関係を促進する
庭の植物を全部植え替えるわけにはいきません。かといって、苗や種をどんどん買ってきて菌根菌を接種させるというのもお金がかかってしまいます。
そこで去年から、草花の種をあつめたり、庭に勝手に生えてくる若木をいったんビニールポットに移植して菌根菌を接種させたり、挿し木で作った苗を定植時に菌根菌を接種させたりして、とにかく、ただで育てられる植物に菌根菌をできるだけ多く接種しようとしています。いずれはすべて庭のあちこちに戻して、その周辺の植物に菌根菌がどんどん感染していくようにするつもりです。菌根菌の接種はもちろん植物単位で行うことになりますが、結果として庭全体に菌根菌を接種する形を作り上げたいのです。
このシダと同じ物を昨年同じ場所に植えたが、環境があわないのか早々に枯れてしまった。庭の北側はこれまで何を植えてもつかなかったので、土は砂地のようにかさかさ。地面においてあるのは杉のバークマルチ。南側の庭にある木々さえほとんど乾燥して茶色みをおびているのに、菌根菌を接種した植物だけはまるで夏の盛りのようにつやつや | |
このシダも通常は水遣りを好むはずだが、真冬の砂地でも生き生きとしている。植えてすぐは菌根菌がもぐり込まなかったと見えて、右の方に枯れてしまった枝の名残が残る。11月に植えたのにこの時期に新しい生長がみられるのも不思議 | |
庭の南は、庭全体に落ち葉が落ちるままにマルチをほどこしてある。手前のローズマリーにも菌根菌が接種してある。もう何年も土着となっているオキザリスのあせた色合いと寒さにしおれた様子が対照的 | |
こちらはすぐ隣にある新参者のオキザリス。もうお分かりと思うが、これにも菌根菌をほどこした。柔らかいのにはりのある葉。たいして大きな株ではなかったにもかかわらず、冬の間に数倍に増えた |
2.不耕起栽培をめざす
せっかく、土の中で伸びようとしている菌根菌も、土を耕すとずたずたになってしまいます。多くの自然農、有機農の提唱者が言うように、本来は、土を自然の状態に戻すには耕やさないべきなんです。耕すと、土が一見ふかふかになったように見えますが、土中の有機質は好気性の細菌に食べられてしまい、さらにやせてしまいます。耕さないで、作物や一年草の雑草の地上の部分だけをかりたおして、その場に寝かせておけば地上部分が地面の温度の上昇や保湿を助けてくれて、根の部分はいずれ腐り、土の団粒構造を作り上げてくれます。また、土中の生態系も乱さず、菌根菌のネットワークも切れずに、より早く土が肥える結果になるはずです。自然農では施肥を行わずに化学肥料をやっている作物より立派な作物を育てられる理由です。
雑草を根こそぎに抜いたり、堆肥を地面に漉き込んだり埋めたりなどという一般的な園芸の作業も、耕すのと同じく、土中の生態圏を乱す作用があります。
とどのつまり、できるだけ土の中をそっとしておいてあげるのが一番ってことでしょうか。
植えたとたん、いったん消えてしまったものの、 冬になってカムバックしてきた植物。葉の艶も抜群 |
3.土壌の過肥を避ける
菌根菌を含む多くの土壌微生物は、微栄養でもっともよく繁殖し、過栄養になると死んでしまうものさえもあります。また、植物自体の毛根の張り方も、過栄養状態では悪くなり、環境の変化に弱い苗となります。
うちの庭は(庭っていうより、畑と庭が一体になってますが)、家内が花や木を植えて、僕が食べられるブルーベリー、ラズベリー、サトイモ、ショウガ、ハーブ、サツマイモを植えています(^^;)。それも、うねなどを作らずにあちらこちらにランダムに植えているだけ。でも、結構まともに生えてきます。14年前からいっさい肥料をやっていませんが、不思議にたいがいの植物は曲りなりにも育ちます。2年前に「マルチ」といって、庭全体に落ち葉や雑草の地上部を切ったもの、そして木を剪定した後の枝葉を刻んだものを積み上げるようになってからは、さらに植物の健康状態が改善されてきているように思われます。
去年の夏は、うだるような暑さの中、マルチをしきつめたうちの庭だけは、すぅっとするような涼しい風が吹き、多くの蝶が舞い、ハチドリまでが遊びに来ていました。マルチを試してみて2回目の夏でしたが、実に不思議な光景でした。
マルチは、このように土を肥やして土壌の生態圏を守る働きがあるだけでなく、雑草もはびこらなくなります。マルチをいったん除き、苗を植えたり種を播くだけで、望ましい植物だけを選択的に育てることもできます。でも、大げさな理屈はなにもありません。なんのことはない、森や山の地面の真似をしているだけですから(^_^)。ミミズもそれを心得ていて、マルチの下にもぐりこんで葉っぱを食べ、地面に潜っては糞をすることで、土をどんどん豊かにしていってくれます。
冬に強いといわれるチェッカーベリーだが、 それにしても色鮮やかで葉も厚い。 尋常ではないと驚いている |
(text&photos/special thanks to Yash)